「夫婦公論」は、随分前から持っている本。
何度も読み返していたのもあって、少々くたびれている。
でも中身は抜群に面白く、時がたってもその魅力は色褪せない。
藤田宜永・小池真理子両氏の著作である。
今作が発表された頃は、小池さんだけがそうだったのかな。
続いて藤田さんも受賞され、ご夫婦揃って直木賞作家となられた。
夫婦の往復書簡、いや、かけあい漫才のようなエッセイ。
これが本当に痛快で楽しいのだ。
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夫婦の役割分担、車の運転、買い物、夫婦の会話・・。
互いが先立った時を想像して・・、口説き文句について、などなど。
ひとつのテーマを、相互の立場からそれぞれ述べられている。
包み隠さず正直に、勢いを持って発される言葉の数々。
時に辛辣でありながら、全然腹が立たず、誰も傷つけず。
しかも爆笑ものの面白さ。これってすごい。
さすが、筆一本で生きているお二人だ。
自分に引き寄せて考えると・・。
独身の頃は藤田さん(男性)の言い分により気持ちが沿う気がしていた。
結婚したら小池さん(女性)目線に「分かる~」と共感する事が多くなった。
気付いたらそうなっていたのだ。圧倒的に。
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車の運転の時、”ブレーキだ確認だと助手席で言わないで”。
目的もなく店を見て回る時間を楽しむため、”買い物は男抜きに限る”。
毎日の献立を考えるのは大変。
ちょうど残ってるものがあるし・・と献立に異分子を入れようとする。
と、夫から拒否される。
つい、”カレーに納豆だっていいじゃない”と言いたくなる・・。
スーパーへ一緒に行くと、値段も見ずカートに物を放り込む夫。
節約が得意なのは、”女はプラスとマイナスを冷静に把握する”から。
うんうんそうそう、その通り。よく言ってくれた!の嵐。
小池さんの言葉にいちいち頷く。
だけどきっと男性も、藤田さんの言葉に快哉を叫んでいるに違いない。
悲しいことがあっても・・。
”涙を流しながらでも、甘い物を口にできる”したたかさを持つのが女性。
”男は意外に細かい”。だから。
自分を繊細だと思っている女の、雑な所業に口を出さざるを得ない。
はい。”小言ジジイでけっこうです”。
余計な事をせずおとなしくしててほしい、と妻や彼女が思っていても。
余計なことは”やめられません”というのが男というものなのだ・・。
男性は藤田さんの言葉に共感するのだろう。
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長年連れ添った夫婦、新婚さん、つきあっている二人。
藤田さん・小池さんの言葉は・・。
男だから女だからという基準だけではなく。
それぞれの立場や組合せの相性によって共感する箇所が違う・・。
という事もあるだろう。
他人だった二人がつきあい、一緒に暮らすなど寄りそって生きること。
ここからうまれるもの、関係性。
それらはお互いがこんなにも違っているから面白いんだと思う。
違いを尊重して楽しみながら、日々笑って暮らして行きたい。
○「夫婦公論」 藤田宜永・小池真理子<幻冬舎文庫>
私が持っているこの文庫本は、15年前に発行されたもの。
小池さんは藤田さんのことを ”ライバルもしくは戦友”と言わ
れていて、藤田さんは夫婦共に小説書きを生業としているこ
とから、”小説はかすがい”だとおっしゃています。
男女・夫婦のそれぞれの違いが面白くえがかれ、本音をぶつ
けあえる人がそばにいることの大切さ、楽しさを実感できる本
です。とにかく楽しめるので是非。。