西原さんの作品をよんだのは
「恨ミシュラン」が最初だった。
絵が特徴的というか、衝撃的で・・。
ヘタウマと言われるゆるめの
タッチだが、これがいい。
このタッチで、
強烈なギャグも叙情的なお話も
描かれている。
厳しい視点と愛情を併せ持つ、
懐深い肝の据わった女性。
これが、私の持つサイバラさんの
イメージだ。
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ふにふにしていて不思議な生き物
「いけちゃん」。
困ると小さくなり、うれしいと増える。
”せかい中で人よりはやく大人にならない
といけない子供っているんだよ。”
つらいことがあって受け止めきれない
「ぼく」にそう話すいけちゃん。
いけちゃんは、「ぼく」をさとし、
なぐさめ、共に喜び、悲しんでくれる。
スーパーマンみたいに助けてくれる訳
じゃない。だけど。
小さな「ぼく」にいつも寄り添って
くれる存在。
小さな男の子、男子って、
暴れん坊で、バカなことばっかりするし、
下品なことも大好きで。
そんな男の子が少年に、
そして大人になっていく。
大きくなるとみえなくなる、いけちゃん。
恋を知り、
実体を持つ女性があらわれると消える。
これはその女性が「いけちゃん」になる
からだと思う。
いけちゃんの存在、担ってくれていた役割。
愛し、包み、許し、励まし、そばにいる。
そして笑ってくれる。
いけちゃんは母性そのものだ。
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いけちゃんの正体を知ったら・・
涙が出た。
誰もがきっと願ったことのある気持ち、
それを思い出すから。
大好きな人や大切な人の、小さかった頃。
当時の彼は、
大人になったらいなくなるのではなく。
ずっと生き続けているんだと思う。
昔の彼に、より今に近い彼が
重なり・重なりして、今の彼がある。
そんな気がする。
どんな悲しい想いも、寂しい気持ちも、
痛い失敗も、辛い出来事も。
いけちゃん的存在に受け入れられることで
、癒えて糧になる。力になる。
会いにきてくれた「いけちゃん」の
時を越えて寄り添う母性を思うとき。
人ってひとりだけど、
ひとりじゃないんだなとしみじみ感じる。
誰かの母性に触れた覚えがなくたって、
自分の心の中にはきっとある。
だから与えればいい。
そうすればぐるぐる巡って返ってくる。
いけちゃんと出会えたことが
嬉しくってしあわせ。
いけちゃん、ありがとう。
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○「いけちゃんとぼく」
西原理恵子<角川文庫>
サイバラさんの描いた絵本が
文庫本サイズになったもの。
のびのびした線、美しい色使い・・
絵を見ているだけで、
胸に温かくきれいなものが
ふわ~っと広がってきます。
いけちゃんが話す言葉の
ひとつひとつが愛にあふれてて。
それだけでもぐっとくるんですが、
いけちゃんの正体を知ってから
振り返って読むとまた涙が・・。
いけちゃんに
是非出会ってみてください^^
サイバラさんの作品はこういう叙情的なものもすごくいいですし、体当たり取材&実体験もの(「鳥頭紀行」や「できるかな」など)も面白いです。以前、サイバラさんご本人をお見かけしたことがあるのですが、小柄で可愛らしい方でした。見た目からは想像できない、無頼というか破天荒な生き方(←主に結婚前?今もかな・・)とギャグセンス。しびれます。アニメや映画にもなった「毎日かあさん」もまた抱腹絶倒の内容。以前やんちゃざかりの男の子の母である私の友人が「寝る前、必ず寝室に掃除機かけるよ。じゃないと砂でざらざらするから・・」と言っていて、えーそんなことあるの?と驚いたのですが、それもこの作品を読むと理解できました。男子って・・生命力のかたまりでおバカで可愛い。お母さんは大変だろうけど(笑)。