「最初の、ひとくち」。
イラストレーターの益田ミリさんが書かれた「食」にまつわるエッセイだ。
益田さんの漫画やエッセイなどの著作・・。
絵はほんわかゆるい雰囲気なのだが、実はぴりっとした隠し味がある。
的を射たアフォリズムの数々に、思わず「うんうん」と頷くこと多々。
今作は鋭い警句というよりも・・。
はじめての「味」に出会って感じた気持ちや思い出を淡々と綴ってある。
益田さんの体験を読むと、読み手もそれを追体験することになり。
自身の思い出もするする~っと芋づる式に出てきて、うれし懐かし・・。
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本作に登場する食べ物の例を挙げると・・。
おかしなら、ピノ、エンゼルパイ、カラムーチョ、小枝などなど。
コーラ、シェイク、午後の紅茶などの飲み物。
ツナマヨ寿司、しゃぶしゃぶ、マンゴー、フルーチェ、パフェ、スフレ・・。
今では当たり前になっている食べ物でも、当時は斬新さに驚いたものだ。
エンゼルパイもカラムーチョも、最初から思い切りはまったおかし。
シェイクをはじめて飲んだ時は吸っても出てこなくて苦労したっけ。
そうそう、お茶が売られるなんてと私もびっくりした。今は普通だもんなぁ。
ツナマヨ大好き、しゃぶしゃぶはよく友人と食べに行った。
フルーチェは幼い頃のうちおやつの定番。ピーチが好きで・・。
読みながら、過去の自分が語りかけてくる。もう、うるさいくらい(笑)
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益田さんが”はじめに”で書かれていること。
大人になると、ちょっとやそっとの新しい食べ物では驚かない。
子供の時のほうが、驚きを伴う食べ物によく出会っていた。
・・これはほんと同感。
経験値だけでなく、感受性の問題なのだろうか。
誰でも、みーんなにある、いろんな食べ物の”最初の、ひとくち”。
どんな場所で、誰と食べていたのか。自分はどう感じたのか。
苦手だった食べ物も、ずっと好きな食べ物も。
思い出すのは楽しい。
食べ物に付随する、それぞれの思い出。
思い出があるから食べ物はただの食べ物じゃなく、愛情のやりとりを
思い返すキーとなるのだ。
益田さんの年齢より少し下で、同じアラフォー世代の私。
あ、これそうそう、そうだった!とほぼ全部に共感しながら読み進めた。
益田さんの思い出をたどりながら、自分の思い出も引き出される。
自分や家族の最初のひとくちを思い出したならきっと。
ほっこり和み、あったかな気持ちになれるだろう。
○「最初の、ひとくち」 益田ミリ<幻冬舎文庫>
益田さんと同世代ならまさにどんぴしゃ!の食べ物が次々
登場する。といっても、おかしや飲み物は昔からあって今も
販売されているものなので、今から”最初のひとくち”を体験
することも可能だ。
文中にはさまれる”おもいでおかし”や四コマ漫画の一つ一
つがツボ。くすっと笑えて面白い。
○「OLはえらい」 益田ミリ<文春文庫PLUS>
なぜか一人だけロバの主人公、ロバ山ロバ子は27歳のOL。
ロバ子を中心に、会社や家族の人間関係を織り交ぜて描か
れた4コマ漫画。OLをしていた人なら分かる会社のあれこれ。
めんどくささ加減や、もやもや感。ちょっとした嬉しい出来事。
気遣い、息抜きなどなど。共感しながら読む前より少し元気に
なれる作品。