佐川芳枝さんは、東中野にある「名登利寿司」のおかみさん。
主婦業・おかみさん業の傍ら、文筆業でも活躍されている方だ。
結婚後、いつか自分の本を出したいと投稿することからスタート。
企画が通り、何度もの書き直しを経て・・。
数年越しでついにその夢を叶えられた方なのだ。
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表紙にある通り、お店を切り盛りしているのはご夫婦お二人だけ。
主婦業・子育て・おかみさんとしての仕事。
これらをきちんとこなしながら文章修行をし、初の著書を出版・・。
それから今に至るまで、多くの著作発表を続けておられる。
主婦であり、おかみさんであるという以前と変わらない生活のまま。
まず自分の役割や仕事ありき。
仕事、家族やお客さんとの関係・・。
それを何より大切にしながら、同時に夢を叶えていく姿がすごく良い。
夢を叶えるには、情熱と根気と努力が必要。
そして自分の目の前のことを大切にすることだ。そう思った。
地に足のついた生活ぶり同様、読みやすくて安定した文章。
初めて佐川さんの作品を拝見したのは・・。
第一作「寿司屋のかみさんうちあけ話」。
それ以来はまってしまい、著作を続けて拝見している。
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今回の「寿司屋のかみさん うまいもの暦」もやはり面白かった。
お店のお客さんとの交流、仕事終わりの夫婦の晩酌の様子。
季節ごとの寿司ネタやおつまみなどの料理、賄いなどのレシピ。
ちょっとしたコツなどもえがかれている。
楽しかったり、じんときたり、読んでいると食べたくなって喉が鳴る。
いつもの、すんなりした佐川さん節が心地良い。
旬の食べ物から季節を感じる。
人とのふれあいから元気を貰い、あたたかな気持ちを持ち帰る。
おいしいものを食べると、うす暗いもやがさっと消え、心が晴れる。
佐川さんのご主人がいつも言われるという言葉。
”「最初は誰でも一見さん、二回目からは常連さん」”。これが好き。
敷居が高そう・・という寿司店のイメージが変わる。
親しみやすくて、安心できるお店なんだろうなと思う。
佐川さんの書かれた本書は、おいしい歳時記だ。
序章に”読者のみなさんも、寿司屋のカウンターに座った気分で”
とあるように、カウンターにいる臨場感と共に楽しめる。
○「寿司屋のかみさん うまいもの暦」佐川芳枝<講談社文庫>
文庫書き下ろし作品。佐川さんが毎日パソコンに書き綴った六
年分の日記から、季節ごとのおいしい話を選んで一年分にまと
めたもの。季節ごとの魚介類や、朝食・晩酌の献立レシピが、
本当においしそうで。読んでいれば「あ、これいいな」と思える一
品にきっと出会えると思います。おなかがすくこと請け合い(笑)。