M先生のこと -会いたいときに-

今から約2年前、2017年3月に
書いていた文章を見つけたので、
ブログにもアップします。

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先月(2017年2月)、
私あてに葉書が届いた。
それは、一度だけお会いした女性の
ご家族からで、女性の訃報を知らせる
ものだった。

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昨年夏、私は取材で大阪の箕面市に
出かけていた。

帰りに立ち寄ったカフェでお茶して
いたら、お店のかたに
「今2階で画家の先生の個展を
してるんです。良かったらご覧になって
みませんか。」と言われた。

階段を上がると、
そこには壁面にぐるりと独特のタッチ
の絵画が飾られ、その中のひとつ、
太陽を描いたものに惹かれた。

「この絵がお好き?そう。」と
白髪(はくはつ)の年配女性が、椅子から
立ち上がり、話しかけてこられた。
それがM先生だった。

太陽と月が描かれているそうで、穏やか
に見えるけど、情熱がこもっているのだ、
とのこと。

情熱を持つことは大事、そして
「もっともっとはじけなさい」と言われた。
命を燃やして表現すること、
心の糧になるものを見つけること。

いろんな話をした後で、
「私、あなたが好きだわ。ぜひまた
お会いしたいから、連絡先を交換しましょう。
いつか梅田ででもお茶しましょうね。
時間がある時にぜひ電話してね。」
M先生はそう言って笑顔になった。

その日の個展終了時間になり、
先生と駅まで歩き、手を振ってわかれた。

だがその後、
私がM先生に電話することはなかった。

講座や仕事、営業などでバタバタし、
あっという間に数か月たって年を越した。

ふと、先生のことを思い浮かべることも
あったが、連絡するという行動にまでは
結びつかなかった。

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葉書を手にしたとき、
しばらく動けず、胸がちくっとした。
それは後悔だったのかもしれない。

一度しかお会いしなかった。
だけど先生は、私の名前と住所を手帳に書いて
大切にしてくれていて、それを見たご家族が、
私に葉書をくださったのだ。

私を好きだと、きっと会いましょうね、と
言ってくれていた。それなのに。

いつでも会えるとどこかで思っていた。
だけどそれは幻想なのだ。

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ふと思いついたことでも、
行動するのは大げさかなと思っても
会いたい人には会いたいと言い、
会いにいけるときに会いにいく。
それが大事なのだと改めて思った。

好きな人に会えるのって
とても貴重で幸せなことだし、
好きだと思われることも、
やっぱりとても嬉しいことだ。

好きな人と同じ時間を共にすごす。
当たり前だとか、またすごせるだろう、
とか思わず、その時間をもっと大切にし、
胸があたたかくなる感覚=幸せを感じたい。

会いたい人に勇気を出して会いたいって
言えたら、言ってもらえたら、
お互い幸せなんだと思う。