そのタンスは実家で一番背が高く、
一番ボロボロだった。
母が大事にしていたものだったが、
父のベッドを置くことにしたため、
処分することになったらしい。
——–
この度、
父が退院した時のことを考えると、
2階は危ないので、1階。
1階のどこにベッドを置くか考え、
家事導線の都合もあり、母の部屋に決定。
(追記:のちにリビングへ移動)
ここが一番お風呂やトイレに近く、
父の眠り等を妨げないのでは、と
判断したためだ。
今回、父のベッドを置くにあたり、
狭いからどうしてもタンスをひとつ、
処分しないといけなくなった。
そこで選ばれたのが、例のタンス。
母が結婚する時に、祖母が買ってくれた
ものらしい。これには思い出がある。
3歳の時の私は、シールが大好きだった。
ソーセージを買うと、おまけについてきた
鉄腕アトムのシール。
1枚のシートにたくさん「アトム」がいる。
貼りたくてウズウズしていたら、母に
「あんた、それ、どっかに貼ろうと
思うとるんじゃないじゃろうねー。
絶対貼っちゃだめじゃけんね!(広島弁w)」
と言われた。
「うん。分かっとる。」頷きながら
そう神妙に答えた私だったが、
次の瞬間にはそれを忘れ(笑)、
シール片手に家の中を歩き回った。
そして格好の場所を見つけた。
母のタンスだ。
だって、茶色のひろーい木の板があって、
シール貼ったらさぞ楽しいだろうなー、
って思ったんだもん。
私は、ゆっくりと一番大きなアトムのシール
をシートからはがし、ぺたっと貼り付けた。
もちろん目立つように、
アトムが格好良く見えるように、
板のちょうど真ん中に、だ。
それからはもう夢中。
一心不乱に、ちっちゃなシールまでぜんぶ
貼り付けていたその時。
「こら―――!!」という大きな怒鳴り声に、
全身でビクつく。
すごい形相の母にこっぴどく叱られ、
即座に剥がすよう命じられた。
だが、シールはなかなか剥がれない。
時間をかけてどうにか剥がしたのだが、
“一番格好良く見えるように”
ど真ん中に貼った、あの大きなアトムの
シールだけが剥がれない。
何をどうしてもだめ。
母も挑戦したが、張り付いたままだった。
…という訳で、
アトムのシールは40年もの間、
この、母が大事にしているタンスと
共にあった。
「そうそう。あのアトムのタンスね。
とうとう処分することにしたみたいよー」
と妹。そっかー。そうなのか…。
父が退院して自宅に戻ってくる。
タンスのない空間に、新しいベッド。
引越しや地震対策の話が出た時も、
これは手放したくないと言っていた
「アトムのタンス」を、躊躇なく処分する
ことにした母に、あの時はごめん、と
あやまろうかな、とちらっと思った。
———
ブログでは書いていなかったのですが、
実家の父が5月中旬に入院し、手術と検査を
経て退院。現在自宅にて療養中です。
私もその時は2週間ほど実家ですごしていて、
これからも度々広島に帰省し、しばらく滞在
することも増えるかもしれません。
そうなったら、広島の実家と、
自宅の両方からブログ更新を続けていきます。
(実家は山の中で電波状況がよくないので、
つながらないことがあるんですが‥^^;)
どうぞよろしくお願いします。