はじめから名人 -天才を愛でよう-

「突然あらわれてほとんど名人である」
山本夏彦にそう評されたのは、作家の向田邦子。

職能ってじわじわ高まるのではなく、
まずある程度生まれ持ったもの、
という土台があり、そこから行動によって
ぐっぐっと段階的に上がっていくものだ、
という気がする。
生まれつき、持っているか、持っていないか、
という要素が大きいのではないか、と。

通常は練習すればうまくなる、努力すれば
うまくなる、という意見が受け入れられ、
支持されている。
その方が万人に優しく、可能性や間口を
広げる考えだからだろう。
私も今までそう思って来た。でもね。
これ、違うんじゃないかと思い始めた。

天才的な作品を残す人って、
もう初めから違うのだ。
天才までいかずとも、ものになる人、
それで身を立てるくらいになれる人も、
やはり初めから普通の人とは違うことが多い。

駆け出しだから、まだ経験ないから、
というエクスキューズが必要ないほどの
才能が、はじめの作品からきらめいている。
まぶしいほどに。

そういう人が好き。そういう人の作品が好き。
俳優、作家、写真家、芸術家、音楽家いろいろ。

天から与えられたその才能と魅力に
ひれ伏したいし、手放しで絶賛する。

そしてそういう人がいるからこそ、
天才ではないけど、コツコツ努力して
ある程度までいく人の良さも分かる、
と思うのだ。

天才にはかなわない。
だけどその人らしい作品を残し、
それが誰かの喜びになる、というのも
素晴らしいこと。

世の中には「突然あらわれてほとんど名人」
という人がいる。 それはもう仕方ない。

天才の光と影をうらやむより、自分らしく
生きればいいのだ。
近くに天才がいるなら、惚れこんで応援すべし。
(しなくても天才は世に出てくるけど笑)

天才を愛でよう。
この世の宝を愛で、自らも自分なりに輝くのだ。