四姉妹の物語・・小説だと若草物語、細雪などが思い浮かぶ。
どちらも名作と言われる作品だが、この「海街diary」もそう。
舞台は鎌倉。
長女・次女・三女そして四女。四女だけは母親が違う。
もともと三姉妹が住んでいた、極楽寺駅近くの古い一軒家。
ここに、父親の死がきっかけで四女が同居することになる。
”この物語を知らなかったあなた、少し損してましたね”
書店で見かけた時、確かこんなキャッチコピーがつけられていた。
一番売りたい本、とも。迷わず手にとってレジへ。
普段そう書かれていても、自分がぴんとこなければ買わないのだが、
この作品にはなぜか惹かれた。
そして、あ~出会えて良かった、と思った。
鎌倉の四姉妹を知った後・・。知る前より幸せ。
心のどこかにこの四姉妹がいてくれる今が嬉しい。
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思い通りに行かない自分の気持ちと葛藤。
家族の絆。人と関係を紡ぐことの難しさ、あたたかさ。
不倫の恋、幼い恋、あっという間に去った恋、生まれつつある恋。
それぞれの恋模様をはさみつつ、繋がりと成長を描いた物語。
作者による登場人物のキャラクター設定とストーリーテラーぶり。
もう素晴らしくって、まいったーという感じ。
いくらでも重くできる内容を、さらりとしたタッチで描いている。
だけど深い。しんしんと染み入るように。
そして胸にささる印象的な言葉やモノローグ。
”子供であることを奪われた子供ほど哀しいものはありません”
”誰かに傷つけられたと思っても いつの間にか別の誰かを傷つけている”
一つ一つが読み手の心に降り積もり、涙があふれてくる。
シリアスとユーモアのバランスの良さも魅力。
考え込みそうな場面で、ふっと入ってくるユーモアが絶妙。
可笑しみ、哀しみは紙一重。笑える余裕があるのは救いだ。
作品中、鎌倉の神社仏閣、名物などが織り込まれているのもいい。
読んだら鎌倉に行きたくなる。
今年はもう何回か鎌倉へ遊びに行ったけど、また行きたくなった。
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いろんなことがあっても。
まっとうな気持ちや良心を思い出して生きていく。
そのすがすがしさやあたたかさ、力強さを感じられる作品。
何度も読みたくなり、何度読んでも心の深い部分がじわっと温かくなる。
ほんと良書です。
○海街diary1蝉時雨のやむ頃 吉田秋生<フラワーコミックス>
(以下、2 真昼の月、3 陽のあたる坂道、4 帰れないふたり)
しっかり者の長女、幸(さち)は看護士。
不倫の恋で父が出て行ったこと(相手は四女:すずの母)を
許せていないのだが、自身も同じ恋路をたどっている。
個人的には幸の部下、アライさんを見てみたい(笑)。
信用金庫のOLである次女、佳乃(よしの)。
つきあった相手は大学生と思っていたらなんと・・。酒豪で、
酒にまつわるエピソードが面白い。
突然アフロヘアにして皆の度肝を抜いた三女の千佳(ちか)。
スポーツ用品店勤務で、店長もアフロ(←付き合ってる?)。
三姉妹にひきとられた四女、すずは中学生。
所属する地元のサッカーチームや学校での人間関係、恋・・。
思春期の瑞々しい心情が何とも言えずいい。思い出す感じ。
*シリーズ連載中とのこと。今後の新刊が待ち遠しい・・。。