高田郁さんの大人気シリーズ~みをつくし料理帖~。
手にとったのは偶然。
書店で「あ、これ面白そう・・」と何気なく買い求めた。
これがシリーズ第1作目「八朔の雪」。
読み始めてすぐこれはいいと思い、既刊を買い揃えて一気に読了。
以来、半年に一度の割で刊行される新作を心待ちにしている。
私はもともと時代小説が好き。
学生時代「鬼平犯科帳」を読んで、鬼平かっこいー!とのめりこみ。
「御宿かわせみ」では、「るい」みたいになりたいな~と夢想していた。
この、みをつくし料理帖の舞台も江戸(東京)。
訳あって大坂から江戸に出てきた女料理人・澪(みお)。
彼女の恋と仕事、成長、人々との関わりが丹念に描かれている。
高田さんの著作を読んだのはこの作品が最初。
読んでいると情景が映像でどんどん浮かんでくる。
漫画原作者としてデビューされたそうで、なるほど、と思った。
平易でよく練られた文章。平易とはもちろん良い意味。
分かりやすい表現・文章は、読み手にとって有難く、とても大切なこと。
「どや顔」してない、さりげなくも的確な比喩が良い。
この比喩が、登場人物の心のひだを優しく表現している。
言葉ひとつひとつの選び方が好き。
何より、根底に高田さんの温かい愛があふれているのが良いんだなー。
それぞれの人物が抱える事情、生きてれば色々ある。
やなやつやつもいるし、大変でどうしようもないことだって、ある。
そんな中でも澪は、持ち前の根気と誠意で、地道に一歩ずつ進んでいく。
スーパーウーマンじゃない、普通の女性としての弱さや疑いも持ちつつ・・。
幼い澪が手相見に言われた「雲外蒼天(うんがいそうてん)」の相のように。
艱難辛苦が降り注いでも耐えて精進すれば、必ず真っ青な空を望むことが
できる・・という未来を信じ、「がんばれ澪!」と声援を送りたくなるのだ。
そして。
~みをつくし料理帖~とあるように、作品中では料理が重要な位置を占める。
澪の卓越した料理センスから生み出される、数々のおいしいレシピ。
これが、それぞれの巻末で紹介されているところも面白い。
小説の中に出てくる料理・・一体どんな味なんだろうと想像していた人。
そう、私みたいな人間の興味も満たしてくれるという、至れりつくせりぶり。
この作品は、読み進めるごとに心が洗われ、清らかになっていく気がする。
優しく心にしみ込んで、温かい涙が自然とあふれてくるような・・。
澪のいる世界にぜひぜひ(手招き)。
○「八朔の雪」 高田郁<ハルキ文庫>
澪、登場の第1作目。種市と出会う場面や小松原とのやりとり、源斉
その他ら登場人物との関わりがぎゅぎゅっと詰まった1話(狐のご祝
儀ーぴりから鰹田麩)から、料理番付で初星をとり、災難後にある人
と再びご縁を得て立ち直るまでが描かれている。
ちなみにこの~みをつくし料理帖~は連載をまとめたものではなく、
全て書き下ろし作品。文庫本で、刊行もまだ6冊。すぐ追いつけます。