食~心を代弁するもの~、「まんがキッチン」 福田里香

ありがとうな毎日 seeding of the happiness

女の子がお菓子作りをしている表紙絵が可愛いこの一冊。

著者は、お菓子研究家の福田里香さん。

一見すると、料理本のようだけど・・。

実はまんが好きとして知られる福田さんが書かれたエッセイである。

(表紙イラストは羽海野チカさんが描かれたもの。対談も収録されている)

まんがと登場する食べ物(文中ではフードと記されている)との関わり・・。

これを、まんがの歴史の縦軸・横軸を織り交ぜながら書かれている。

その広い知識と深い考察!もうもう、びっくり&圧倒された。

先に、料理本ではないと言ったけれど、実はその側面もある。

まんが作品のイメージ、もしくは出てくるフードを実際に作り、そのレシピと

作り方も写真(これがまたいい!イメージが膨らむ)と合わせて紹介されて

いるから・・。 まんが好き&くいしんぼにはたまらない魅力満載の内容。

こういうのやってくれたんだー(嬉)という、今まで見たことのない本である。

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たとえば。

「のだめカンタービレ」の章では、のだめが発する「ぎゃぼー」にちなみ。

「ぎゃ棒」というお菓子を作られている。・・面白すぎ。

「グーグーだって猫である」では・・。

作品中に登場する作者:大島弓子氏の自画像を模したケーキを。

「さかさ食パン型のケーキ」と名づけられているが、この形が最高。笑

福田さんのまんがの知識、お菓子作りの知識が見事に合体している。

そして発想と感性の豊かさに感じ入る。すごくいい。

読んだことのあるまんがなら、あはは、そうそう、ツボだー、と共感し。

読んだことのないまんがなら、そっかぁ、面白そう、読みたいなと触発され。

知っている世界を再考し、未読まんがの入門編にもなっている・・。

そんなこの本の中でキーとなっているのが、フード。「食」である。

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フードは登場人物の心情をあらわしている・・という事に注目した福田さん。

まんが作品中でフードが果たしている役割。

食べるという行為がどんな意味を持っているか。

それを例と引用を適度に用い、丁寧に、濃く、持論を展開されている。

たんたんたんっと、小気味良い文章。硬質でエッジが効いていて・・。

親近感と説得力があるのだ。

食べること、それは生きている人間にとっては切っても切り離せない。

その場面が出てくること、あえて出てこないこと、両方に意味がある。

フードは単に出てくるように見えても、ちゃんと役割を持っている・・。

こう考えると、まんがと食は分かちがたく結びついた関係なのだと分かる。

まんがと食・・二つが一緒に存在することで。

お互いを引き立て、作品をより理解できて味わい深いものにしてくれる。

「食」は心を代弁するものなんだな~と気付くことが出来た。

まんがと食の関係を楽しく提示してくれた福田さんに感謝。

エッセイの文章、写真、レシピ、対談集・・。

ぎゅぎゅっと色々が詰まった、濃くて面白い一冊です。

○「まんがキッチン」 福田里香<アスペクト>

お菓子研究家の福田さん。

面白くておいしそうなお菓子もちろんのこと、文章がほんとに

素晴らしい。分かりやすく、濃い内容で、無駄が一切ない。

濃い文章読んだら、得しただー!と思う私。

お値段以上~という気持ちを抱かせてくれる文章や本に出会う

幸せ。それはこういうところにあると実感した。

さて。本作品中には、いろんなまんがが取り上げられている。

小学生の時、母が私に「お土産にまんが買ってきたよー」渡し

てくれたまんがもあった。母自身読んだことがなく適当に買った

というそのまんがは、「トーマの心臓」萩尾望都。

最初からなんと濃い作品を選んでくれたものよ。笑

まんがだと当時「サザエさん」や雑誌「りぼん」を愛読していた私。

内容が余り理解できず???だったのだが、今回この本で思い

出し、あーそうだったのか・・と思った。

漫画家諸氏との対談もこれまた密度の濃い内容。

羽海野チカ、くらもちふさこ、よしながふみ、萩尾望都(掲載順)。

”まんが読み”なら、ぐっとくるはず。興味をもたれたかたは是非。